★ ・・・それは

暖かい夜に・・・
・・・冷たく凍て付いた、火傷のように爛れた記憶の、
それはーーー

（唯一の過去の話？
暗いです。欝です。見ないことをお勧めしておきます。

陽の下を歩く。
すれ違うのは、悪意の化身の獣。無関心という善人を装う、臆病者。
独り歩く、弱く疵だらけで寒さに震える自分。
噛み付く気概もなく、怨むほどに想いはなく、募るばかりの自虐と虚無と怠惰と侮蔑と嫌悪と・・・
陽の下の暖かさの中、凍えて歩く、唯一孤独の・・・

月を見上げる。
夜に漂う、夜光虫のような街の明かりは・・・好きじゃない。人が、地球に寄生した物ノ怪に見えて。
星は好きじゃない。その儚さが己の弱さを表すようで。その無数の光が、自身を苛む人の、助けてくれない人の多さに見えて。
月に魅入られて・・・このまま狂えるなら、救われるのかとも思い・・・けれど、そんなことはなく。月は冴え冴えと、自身の心の如き・・・空虚な光を放つように見えて。
冷たい夜に瞬く、無数の光を、ただ虚構の心で見上げて佇む、唯一空白の・・・

・・・ただ一つ。月も、星もなく・・・
新月の夜だけは、不思議と穏やかに・・・
・・・未来を信じて、眠れる・・・

それは、記憶の残滓。今はもう、閉じた物語の欠片。