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(株)トミーウォーカーが経営するシルバーレインの愛すべきキャラクター達とその背後のブログです
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轟、一際強い風が吹いた。
思わず目を細め、目蓋の影を見ながら・・・風が吹くように、ふと思い出した記憶に囚われた

・・・思えば、あの子には名前すらなかったのか・・・

(注:スゴーク遅くなりましたが、無双の過去SSの続き、しかも中篇(ぉぃ)です。しかも、暗いです。
後編で終わらせる予定ですが、そちらは更に暗くなると思います(ぁ)
ということで、そういうのが苦手な方は見ないことをお勧めします。
というか、下のネタ的依頼と思いっきり合わないのに、何故このタイミングなんだろう・・・(遠い目)
なお、過去SS前編はこちら?
http://theonega.blog.shinobi.jp/Entry/54/

では、以下「つづきはこちら」から見たいと思ったお方はどうぞ(がくぶる))

 


落ち葉の積もった山の中を、危なげなく駆けぬけた無双のたどり着いた所は、樹齢をどれほど重ねたのか想像もつかないような大木。
だが、その大樹が生命を謳歌してたのも昔日のものと見えて、今は枯れた枝葉と虚ろを抱えた幹を晒している。されど、その大きな幹の中、腐り落ちて出来た虚の中でひっそりと新しい生命が育まれていた。

「・・・いたいた。今日は煮干持ってきたよ」

笑顔を浮かべながら、彼らに向かって言う無双。虚の中で、見返すのは金に光る眼を持つ猫の家族だった。
母猫は野良なのか、若干毛並みも荒れているが生命力旺盛そうな不敵な面構えをしている。子猫は3匹ほど居て、その内の1匹がまだ寝ているのか蹲っているのが見えたが、無双は特に気にせず持ってきた煮干を虚の手前に盛ってから様子を眺めていたが・・・、猫が警戒してるのを察して溜息一つついてから立ち上がった。
「ちゃんと食べて、大きくなれよー。じゃ、またねー」
そして、頂上に向かって駆け出した。明日は何を持って来ようか考えつつ・・・

頂上の手前、やや拓けた所にこの山と同じようにひっそりとした佇まいで掘っ立て小屋があった。二本の太い木に挟まられる位置の土を掘り、木の枝を上手く活用して木の板を渡して屋根とした、手作りというかむしろ原始時代を思わせる小屋だ。
だが、一見非合理そうだが合理的に考えられているようで、大雨や強風に遭っても雨漏りもぐらつくこともないらしい。

その小屋の前で無双は師匠に今日も挑んでいた。

孫と祖父ほどに離れていると思わせる小柄な老人だが、皺の数や白髪以外は高齢を感じさせない動きで無双の攻撃を無駄の一切ない動きで捌いていた。
互いに、気合の声もなく鋭い呼気と激しい踏み込みの音だけが、落ち葉の漣に乗って鳴り響く・・・そんな静かな立ち合いだった。
恐らくは経験を積ませるつもりなのだろう。無双の攻撃や防御の際に出来る幾つもの隙を、軽く触れるだけで済ませていた老人が、ふと視線を逸らした。
それを隙と見た無双が師匠の視線の反対側から蹴りを繰り出す。が、視線を彼方に向けたままあっさりと片手で掴んで止められ・・・そのまま勢いを利用して軽く力を込められて、為す術もなく転ぶ無双。
そのまま、ぼんやりと何処かを眺めていた老人は・・・無言のまま小屋に身体を向けた。
「・・・むー・・・」
後に残るのは、これで今日十本目の負けを喫した、不服気に頬を膨らましてる無双だった。

それから暫し経ち、夕餉の支度を一緒にしながら、無双は矢継ぎ早に師匠に話しかけていた。
「なんで、見ても居ないのに蹴りを受け止められるのさ」
「・・・こちらの思惑通りに動いたからさ」
「何か見えてたの?」
「・・・・・・・・・」
ざくざく山菜を切る二人。
「というか、必殺技みたいなヤツとか教えてよ。ほら、型とかあるらしいじゃん?」
「・・・型は伝えるもの。そこから技に昇華するのは、自身でやることだ・・・」
「型って、そんなに教えてくれてないじゃん。それに・・・ショーカって何さ?」
「・・・帰って辞書を引け」
切った山菜を鍋に放り込みつつ、吹き零れそうな飯盒を少し移動させて火の調整する老人に、熱くないのかなーと思いつつ無双は思いついた端から喋っていく。
「そういえば、今日猫に餌やったー。一匹寝てたみたいだけど、皆元気そうだったー」
「・・・・・・・・・」
「明日は・・・コッペパンでも持って来ようかなー。メロンパンとかも甘くて良いかなー」
「・・・・・・・・・」
「あ、名前も考えてあげたいなー。こう、格好良いヤツ!」
「・・・そろそろ、日が暮れるぞ」
「う、もうそんな時間かー・・・。じゃ、今度こそメニモノ見せてやるからなー!」
外も見ずに言った師匠に、反発なく言う無双。
「じゃ、またねー!風邪引くなよー!」
「・・・・・・・・・」
憎まれ口(?)を叩きながらも去っていく無双に、無言のまま片手を挙げて見送る老人。その瞳に、深い悲しみの色が宿っていることに、無双は気付かなかった。

幾日か過ぎた、変わらず日常の中・・・
・・・無双は、猫の居た大木の前で立ち尽くしていた。

彼の目に映るのは、赤く黒く暗い色彩に染まった大木と、夜の海の水面に浮かんだ岩のようにも見える、母猫の身体。
だが、視界内を多く占めるのは自身と同じくらいの体格の猫だ。蹲ってナニカを貪ってるその口は、赤く染まり・・・垣間見えるその大きな牙で何を喰らってるのか、無双は無意識のうちに理解しつつも、理性では何も考えられない・・・茫然自失の状態だった。
手からぽとりと落ちたメロンパンの音と、それに反応してぎょろりとこちらを見てくる猫を、無双は何処か冷めた意識の中で眺めていた。

シャァアアア!!

威嚇なのか、新たな獲物を歓喜の声で迎えたのか・・・、大きく鳴く妖猫。
対して茫洋とした意識の中、身体がいつの間にか取り慣れた半身の構えをしていることに、無双自身が驚いていた。
妖猫が体躯を裏切る、猫本来の・・・いや、それよりも迅い動きで襲い掛かる。
条件反射的に左の拳を叩き込むも、その程度で妖猫の勢いを相殺出来る筈もなく、押し倒されて右の肩を食らいつかれる無双。
食らいつかれた右肩からは痛みよりむしろ、鈍い衝撃が伝わり・・・、受身も取れずに打ち付けた背中から感じる小石からの痛みで、麻痺してた心が状況に追いつき始める。
「・・・・・・っ!」
肩から顔を上げ、無双の視界一杯に顎を見せる妖猫を見て、叫ぶ余裕もなく身体を捻る勢いを乗せて肘を叩き込む無双。
思わぬ反撃だったのか、妖猫は態勢を崩す。その隙に、無双は素早く起き上がるのかと思えば、その勢いのまま妖猫にぶつかっていく。
それは、獣同士が争うような原始的な生命のやり取り。獣が獲物に襲い掛かるように四肢全身を使って拳を叩き込む無双。
攻撃を受けて不自然な体勢ながらも、お返しだ、と言わんばかりに、先程の無双のように爪を使って反撃する妖猫。
無双はその一撃を受けつつも、その勢いすら利用してその場でくるりと回転し・・・そして蹴りを繰り出す。
倒れて「ギャァアッ!」と鳴く猫に、圧し掛かった無双は一瞬動きを止めるも・・・その赤き口に上半身の捻りを加えて威力を乗せた一撃を見舞う。

その体勢のまま、つかの間動きを止める二つの影。

そっと立ち上がった無双が見守る中、倒れた妖猫は、そのまま動くことはなかった。
・・・・・・・・・その夜、大木の下に、師匠と共に猫を埋葬する無双の姿があった。
彼はその夜、世界の在り方を聞いた・・・

(と、言った所で中篇終了ー。
続きがいつになるのか、むしろ俺が知りたい背後。(ぇえ

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趣味:
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自己紹介:
銀雨キャラ、円藤・無双(b42971)&武藤・唯一(b53884)のPLです。

この作品は、株式会社トミーウォーカーの運営するシルバーレイン』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。イラストの使用権は作品を発注したお客様に、著作権は作成された絵師様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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